
新しい売り方で、本当に売れるのか
ネットで売る。海外に届ける。お店の壁に飾る。新しい売り方の話を聞くたびに、本当に売れるのかと不安になる。
今までの売り方に慣れているほど、新しい売り方は、受け入れにくく見えるものです。
知らない人に作品を送るのは怖い。言葉が通じない相手とのやりとりは不安だ。そう感じるのは、とても自然なことです。けれど、その不安の向こうに、まだ出会っていない大勢の人がいます。
新しい売り方が受け入れにくく見えるのは、まだ試したことがないからです。一度、その道で作品が届く経験をすれば、見え方は大きく変わります。
この連載では、これまで6回にわたって、アート市場の今を数字で確かめてきました。
ここで、ひとつ考えてみてください。今の売り方だけで、これから先も作品は届き続けるでしょうか。
最終回の今回は、新しい売り方と、世界の市場について考えます。
新しい売り方は、
最初は不安に見える。
あなたは、作品の届け先を、どこまで広げてみたいですか。
円安が進むと、国内だけでは手元に残りにくくなる
まず、お金の動きを見ます。1ドルが何円かを、年平均で見たものです。

2010年に87.8円だった1ドルは、2023年には140.5円になりました。2026年3月末には、160円台になったと報じられています。
10年あまりで、円の価値は大きく変わりました。海外から見れば、日本の物は、以前よりずっと手に取りやすくなっています。
円安が続くと、海外から入る絵の具やキャンバス、額などの材料は高くなりがちです。国内だけで同じ値段で売っていると、手元に残るお金は減っていきます。
一方で、海外の人から見れば、日本の物は手に取りやすくなります。円安は、外に目を向けるきっかけでもあるのです。
国内の高額の作品が減り、材料は高くなる。その中で、国内の一部の買い手だけを相手にしていては、作家が描き続ける力は削られていきます。
円安は、
外に目を向けるきっかけ。
日本にいながら、世界へ届ける

外から見てきた、わたしの感覚をお話しします。
日本はこれから円安になる。だからこそ、外に目を向けるべきだと考えています。ただ、作家が外に出ていくのは、とても大変です。危険もあり、費用もかかります。
そこで、日本にいながら外国に販売する仕組みをつくりました。作家は日本で作家活動に専念し、売り先は世界中に向けて広げていく。
こんなことがありました。モン・サン=ミッシェルで、展覧会を開いたあとのことです。
フランスの方が7ARTSのサイトを見て、作品を注文してくれました。
7ARTSのサイトで初めて売れた作品は、海外の方からの注文でした。サイトはまだ完璧ではありません。それでも、海外の人に通じるサイトになり始めています。
日本で描き、
世界に届ける。
数字で答え合わせ:世界の市場は、日本のおよそ100倍
この感覚を、数字で確かめます。

2023年の美術品の売上は、世界全体で約650億ドル。日本は約6.8億ドルでした。世界の市場は、日本のおよそ100倍です。
日本を訪れる外国人も増えています。2024年に日本を訪れた外国人は、3,687万人でした。2019年の3,188万人を超えています。
日本の文化に心を寄せる人が、世界中にいるということです。その人たちが、日本の作家の作品と出会える場所があれば、作品は国境を越えていきます。
「日本にいながら海外に届けられる」という感覚は、一部当たりです。世界の市場が大きく、日本に来る人も増えていることは、数字で確かめられました。ただ、日本の作家の作品がどれだけ海外で買われているかの数字は、まだありません。
それでも、1件の注文が、その道があることを示してくれました。広い市場に、作家の本気で道をひらいていく。それが、この連載の答えです。
海外に届けることは、国内のお客さんを手放すことではありません。売り先を、もう1つ増やすことです。国内と海外、2つの市場を持てば、どちらかが揺れても、作品は誰かに届き続けます。
世界の市場は、
日本のおよそ100倍。
7ARTSは、日本にいながら世界へ届く道を一緒につくる

7ARTSは、日本にいながら世界へ作品が届く道を、作家のみなさんと一緒につくっています。
7arts.jpは5か国語で表示できます。作家は日本語で書くだけで、英語・フランス語・中国語・韓国語で読まれます(解決策2 外国語表示)。
世界中から人が訪れる場所で、作品を見てもらう機会もつくっています。モン・サン=ミッシェルでの展覧会が、その1つです。
この連載で確かめてきたことを、まとめておきます。
- 作品に出会えば、心が動いて買う人はいる(第1回)
- 作品は、限られた場所で買われてきた(第2回)
- アートフェアに来る人は、2019年の数にまだ戻っていない(第3回)
- 今までの買い手は年齢が上がり、少しずつ減っていく(第4回)
- 作家の数に比べて、ギャラリーは限られている。全員は頼れない(第5回)
- お客さんはギャラリーにつく。自分のお客さんを持つことが大切(第6回)
ただ、世界への道を歩くのは、作家自身です。どの作品を、どんな言葉で世界に紹介するか。そこから始まります。
世界への道は、
一緒にひらく。
今日、あなたの作品を世界に紹介する1文を書く

世界の人に見てほしい作品を、1点だけ選んでください。いちばん自分らしいと思える作品です。
その作品を、1文で紹介してみてください。何を描いたのか、なぜ描いたのか。短くてかまいません。
難しい言葉は要りません。海の向こうの人も、あなたの言葉で、作品の背景を知りたいと思っています。
日本語で書いた1文は、作品ページで、英語やフランス語でも読まれます。言葉の壁を、気にしすぎる必要はありません。まずは1点、1文からです。
その1文を、作品ページに載せる。その1文が、海の向こうの誰かに届く入口になります。
連載は、今回で終わりです。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。新しい販路と市場を、これから一緒にひらいていきましょう。
7ARTSが作家のみなさんと取り組んでいることは、作家の方へのページでご覧いただけます。
出典
- 為替:IMF「International Financial Statistics」(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2025」第1-12表)・2026年3月末の報道
- 世界のアート市場:Art Basel & UBS「The Art Market 2024」/日本:文化庁「The Japanese Art Market 2024」
- 訪日外国人:日本政府観光局・観光庁「観光庁長官定例会見配付資料」(2025年1月15日)



