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連載 アート市場を、数字で考える Vol.5

売れている作家が、ひと握りなのはなぜか

連載「これからのアート市場を、数字で考える」第5回。作家と画廊・ギャラリーの数から、ひと握りしか売れない理由を探ります。

明るい白い壁のギャラリーに作品が並ぶ

同じように描いているのに、なぜ差がつくのか

同じ時期に描き始めた仲間が、気づけば人気の作家になっている。自分も同じように描いているのに、なぜだろう。

作品の力に、それほどの差があるとは思えない。それでも、売れる作家と売れない作家の差は、広がっていくように見えます。

差がつくたびに、自分の作品に何が足りないのかと考え込んでしまう。描く手が止まり、仲間の活躍を素直に喜べなくなる。そんな作家の声も、よく聞きます。

けれど、作品の力だけで差がついているのなら、売れていない作家の作品は、どれも劣っているはずです。実際には、そうではありません。素敵な作品を描くのに、まだ売れていない作家は大勢います。

ここで、ひとつ考えてみてください。その差は、本当に作品の差だけでしょうか。

売れている作家が、ひと握りなのはなぜか。今回は、その理由を数字で探ります。

差の理由が分かれば、自分の作品を責める前に、できることが見えてきます。

差がつくのは、
作品の差だけではない。

あなたは、売れている作家と自分の違いを、どこに見ていますか。

扱ってもらえる作家の数には、限りがある

まず、作家の数と、作品を扱う場所の数を比べます。

作家の数と画廊・ギャラリーの数のグラフ。作家47,320人、画廊・ギャラリー約4,300か所、1か所あたり作家約11人

美術の作家は、全国に47,320人(2020年)。全国の画廊・ギャラリーは、7ARTSが数えると約4,300か所(2026年10月)です。1か所あたり、作家は約11人になります。

1か所のギャラリーが、1年に展示できる作家には限りがあります。11人全員を、同じように扱い続けることはできません。

しかも、文化庁の調べでは、美術品を扱う事業者の66%が関東にあり、そのうち59%は東京です。地方の作家ほど、入口は遠くなります。

限られた入口に、大勢の作家が並んでいる。この形が続くかぎり、扱ってもらえる作家は、ひと握りのままです。

ギャラリーの人が作品を見る時間にも、限りがあります。どれだけ良い作品でも、目に留まらなければ、扱ってもらう機会は生まれません。入口の少なさは、作品の良し悪しとは別の問題なのです。

入口が限られていれば、
通れる作家も限られる。

ひと握りの市場の中だけで売っている

明るいギャラリーの一室で、少数の人が作品を見ている後ろ姿
限られた場所で、限られた人が作品を選んでいる(イメージ)

外から見てきた、わたしの感覚をお話しします。

売れている作家は、ひと握りです。それは、ひと握りの市場の中でしか売っていないからではないか。わたしは、そう感じています。

売れていない作家にも、本当に素敵な作品を描く人はたくさんいます。その作品が、まだ新しい市場に届いていないだけです。

広い市場で売れば、活躍できる作家はもっと増える。そこを、7ARTSは開拓したいと考えています。

新しい売り方は、最初は「そんな売り方で大丈夫?」と思われるかもしれません。それでも、その売り方で十分に売れると、わたしは考えています。

ギャラリーと競うのではありません。ギャラリーが見つけきれない作家を、別の入口から世に出す。そうすれば、ギャラリーにとっても、新しい作家と出会う機会が増えていきます。

ひと握りの市場の外に、
広い市場がある。

数字で答え合わせ:作家の多くは、ひとりで売っている

この感覚を、数字で確かめます。芸術家などへの2万人の調査で、組織に入らず、全部ひとりで仕事をしている人の割合を聞いています。

美術・写真・デザインの分野では、78.7%でした。芸能の実演家の50.9%と比べても、ずっと多くなっています。

美術の作家の多くは、事務所やマネージャーを持たず、ひとりで売る場面に向き合っています。売ってくれる誰かに出会えた作家は、ひと握りなのです。

ひとりで描き、ひとりで売る。その両方を続けるのは、とても大変なことです。売れる作家とそうでない作家の差は、作品の差より、売る力の差なのかもしれません。

「ひと握りの市場の中でしか売っていない」という感覚は、一部当たりです。入口が限られ、多くの作家がひとりで売っていることは、数字で確かめられました。ただ、広い市場で売れば売れる作家が増えるかどうかまでは、数字では分かりません。

それでも、入口を1つ増やせば、出会える人の数は変わります。ギャラリーの入口に加えて、自分で届けられる場所を持つ。それが、差を縮める一歩です。

ひとりで売っている作家が多いなら、売り方を工夫した作家から差がついていきます。裏を返せば、今日から始めれば、まだ間に合うのです。

入口を1つ増やせば、
出会える人が変わる。

7ARTSは、ギャラリーの数に左右されない道をひらく

明るい会社の受付の壁に飾られた作品と、通り過ぎる人の後ろ姿
ギャラリーの外にも、作品の居場所はある(イメージ)

7ARTSは、ギャラリーの入口とは別の販路を、作家のみなさんと一緒にひらいています。

7arts.jpの作家ページには、作品を載せておけます。見た人から、購入の申し込みが届きます。

作品の購入のほかにも、壁画や広告、商品化など、9種類の依頼が届く仕組みがあります。どの依頼を受けるかは、作家が選べます。

サイトは5か国語で表示できます。日本の外の市場とも、作品が出会えます(解決策2 外国語表示)。

ただ、入口が増えても、そこに並べる作品と言葉を整えるのは、作家自身です。

作品の写真をきれいに整え、どこに飾ると映えるかを添える。プロフィールに、なぜ描くのかを一言書く。小さな工夫の積み重ねが、ひと握りの外へ出ていく力になります。

ギャラリーの入口に、
もう1つの入口を足す。

ギャラリー以外の「置ける場所」を3つ書き出す

今日、作家がやることの流れの表。ギャラリー以外の置ける場所を書く、1つに丸をつける、その場所に飾った姿を見せる
今日、作家がやること

ギャラリーのほかに、あなたの作品を置ける場所を3つ書き出してみてください。カフェ、会社の受付、ホテル、ネット。どこでもかまいません。

次に、その中で作品がいちばん似合いそうな場所に、丸をつけます。

丸をつけた場所に、実際に作品が飾られている姿を想像してみてください。その場所に来る人の顔が浮かべば、作品に添える言葉も見えてきます。

ギャラリーに扱ってもらうのを待つ時間を、自分で入口をつくる時間に変える。その一歩が、ひと握りの外へ出る道になります。

最後に、その場所に作品を飾った姿を、作品ページで見せてみる。3つ書き出せたら、入口はもう増え始めています。

次回は、お客さんは誰についているのかを、数字で確かめます。

7ARTSが作家のみなさんと取り組んでいることは、作家の方へのページでご覧いただけます。

出典

  • 作家の数:文化庁資料(2020年)/画廊・ギャラリーの数:7ARTS調べ(2026年10月・公開情報から集計。古美術・骨董店、貸しギャラリー、アートレンタルなどは含まない)
  • 美術品を扱う事業者の場所:文化庁「The Japanese Art Market 2024」(66%が関東、そのうち59%が東京)
  • ひとりで仕事をしている人:「芸術家等のセーフティネットに関する2万人アンケート」文化芸術推進フォーラム・日本芸術文化振興会(2023年)