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連載 アート市場を、数字で考える Vol.6

お客さんは、誰についているのか

連載「これからのアート市場を、数字で考える」第6回。作品を買った人は誰とつながっているのか。作家が自分のお客さんを持つ意味を考えます。

明るいリビングの壁に作品が飾られ、窓から光が入る

取り扱いが終わったら、売れなくなった

ギャラリーで扱ってもらっていた頃は、作品が売れていた。取り扱いが終わった途端、ぱったりと売れなくなった。

作品が変わったわけではありません。それなのに、買ってくれる人が、急にいなくなってしまったのです。

作品を気に入ってくれた人は、きっとどこかにいるはずです。けれど、その人たちに新作を知らせる方法が、作家の手元にはありません。

ギャラリーの手元には、お客さんの名前と連絡先が残ります。作家の手元には、何も残らない。その違いが、取り扱いが終わったあとに、はっきりと表れるのです。

作家の方から、こうした話を聞くことがあります。そのたびに、考えてしまうことがあります。

ここで、ひとつ考えてみてください。あなたの作品を買った人は、あなたの名前を覚えているでしょうか。

お客さんが誰とつながっているのか。今回は、そこを数字と一緒に考えます。

作品を買った人は、
作家の名前を覚えているか。

あなたは、作品を買ってくれた人の連絡先を、どれくらい知っていますか。

お客さんがいないと、売る場所を失ったときに止まる

作家の多くは、どんな形で仕事をしているのでしょうか。芸団協が2025年に、芸術家の働き方を調べています。

活動を始めてから報酬を得られるようになるまで、芸術家は平均9.9年かかっていました。

10年近くかけて、ようやく作品が収入になる。その道のりを支えてくれたお客さんとのつながりが、ある日切れてしまう。それは、作家にとって大きな痛手です。

反対に、お客さんとのつながりが続いていれば、売る場所が変わっても、作品は届き続けます。お客さんは、作家にとって、何よりの財産なのです。

売る場所を1つしか持っていないと、その場所がなくなったとき、作品の行き先も止まります。

お客さんの名前も連絡先も分からなければ、新しい作品ができても、知らせることができません。

お客さんとの線が切れていると、売る場所が変わるたびに、一からお客さんを探し直すことになります。積み上げてきたものが、そのたびに消えてしまうのです。

売る場所を失ったとき、
お客さんまで失わない。

お客さんは、ギャラリーにつく

明るいギャラリーで、作品の前で語り合う2人の後ろ姿
お客さんは、紹介してくれた人を覚えている(イメージ)

外から見てきた、わたしの感覚をお話しします。

これまで作品は、ギャラリーや画商が売ってきました。高い値段で売れたのは、ギャラリーにお客さんがいたからです。

その売り方では、お客さんはギャラリーにつき、作家にはつかない。取り扱いがなくなった途端に売れなくなるのは、作家が自分のお客さんを持っていないからです。

ギャラリーが悪いわけではありません。お客さんを大切にするのは、ギャラリーの大事な仕事です。

作家も、ギャラリーも、作品を買う人も、みんなが喜べる形がいちばんです。作家がお客さんを持つことは、ギャラリーと争うことではありません。

そのうえで、作家が自分でお客さんを持ち、直接届けられる環境を持つこと。それが、これからは欠かせないと考えています。

お客さんを、
作家自身も持っておく。

数字で答え合わせ:作家とお客さんの間に、線を引く

この感覚を、つながり方の図で整理します。

作家・ギャラリー・お客さんのつながり方の図。今までは作家とお客さんの間に線がない。これからは直接つながる

今までのつながり方では、作家はギャラリーに作品をあずけ、ギャラリーがお客さんに紹介して売ります。作家とお客さんの間には、線がありません。

お客さんが覚えているのは、作品を紹介してくれたギャラリーの名前です。作家の名前まで覚えてもらうには、作家の側からも、つながる工夫が要ります。

これからのつながり方では、どこで出会っても、お客さんが作家を覚えて帰れるようにします。ギャラリーでも、お店でも、作家ページでもです。

文化庁の調査で、文化芸術のための寄付について聞いています。この1年に寄付をした人は10.9%、今後してみたい人は23.5%でした。

合わせると、およそ3人に1人が、作り手を応援したいと考えています。

「お客さんは作家につきにくい」という感覚は、一部当たりです。今の形では線が引かれにくいことは、図で整理できました。ただ、作り手を応援したい人が多いことも、数字で分かりました。線を引けば、応えてくれる人はいるはずです。

応援したい人は、
3人に1人いる。

7ARTSは、作家の名前が残る場所をつくる

明るい部屋で、届いた作品を壁に飾る人の手元
作家の名前と一緒に、作品が届く(イメージ)

7ARTSは、お客さんが作家を覚えて帰れる場所を、作家のみなさんと一緒につくっています。

7arts.jpの作家ページには、作品と一緒に、作家の名前やプロフィールが載ります。作品を見た人は、作家のことも知ることができます。

作家ページの「このアーティストを応援する」から、ファンが作家を応援できる仕組みもあります。

売れた作品には、7ARTSが作品証明書を付けます。作品の確かな記録が、作家の名前と一緒に、お客さんの手元に残ります。

ただ、お客さんとの関係を育てるのは、作家自身です。新作の知らせや、感謝の一言を届けるのは、あなたにしかできません。

作品を買ってくれた人に、届いたあとの様子を聞いてみる。飾った写真を送ってもらえたら、それだけで関係は深まります。そうして育ったつながりは、売る場所が変わっても消えません。

場所は一緒につくる。
関係を育てるのは、作家。

次の展示で、つながりを1つ残す

今日、作家がやることの流れの表。買ってくれた人を書く、連絡のとれる人に印をつける、次の展示でつながりを残す
今日、作家がやること

これまで作品を買ってくれた人を、思い出して書き出してみてください。名前と、どの作品だったかを並べます。

次に、今も連絡がとれる人に印をつけます。印のない人が多いほど、お客さんとの線が切れているということです。

印のない人とも、まだ間に合うかもしれません。展示の案内や、作家ページの知らせを、次の機会に届けてみてください。

お客さんの名前が1人ずつ増えていけば、売る場所が変わっても、あなたの作品を待つ人は残り続けます。名前の並んだ紙は、作家にとって、いちばん心強い財産になります。大切に育てていきましょう。

次の展示では、来てくれた人に作家ページを伝え、つながりを1つ残してみてください。1人とのつながりが、次の1点を連れてきます。

次回は、連載の最後として、新しい売り方と世界の市場について、数字で確かめます。

7ARTSが作家のみなさんと取り組んでいることは、作家の方へのページでご覧いただけます。

出典

  • 芸術家の働き方:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)「芸術家のセーフティネットの構築に関する調査研究報告書」(2026年3月)
  • 鑑賞の状況:文化庁「文化に関する世論調査」報告書(2024年3月・全国18歳以上24,996人)
  • つながり方の図:7ARTSによる図(数字はありません)