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作家の悩み百選 No.096

壊れやすい作品、触られないか心配

「壊れやすい作品を展示中に、触られないか心配」。見る人を遠ざけずに作品を守るための工夫を考えます。

明るい展示室の白い台の上に置かれた、色鮮やかなガラスの作品

こんな心配はありませんか

「壊れやすい作品を展示中に、触られないか心配」

陶器やガラス、細い線でできた立体。少し手が当たっただけで、欠けたり倒れたりする。

会場に立っている間も、作品に手を伸ばす人がいないか、気が気でない。在廊できない日は、なおさら心配になる。

作品の前で、子どもが手を伸ばしかけて、親が慌てて止める。そんな場面を見るたびに、胸がひやりとする。

ここで、ひとつ考えてみてください。触りたくなるのは、それだけ作品に惹かれたからではないでしょうか。

手を伸ばす人の多くは、悪気があるわけではありません。近くで見たい、確かめたいという気持ちが、つい手を動かすのです。

近くで見たい気持ちを、
守りの工夫に変える。

その気持ちを、ただ止めるだけでは、作品の魅力まで遠ざけてしまいます。見る人の気持ちを生かしながら、作品を守る方法を考えたいところです。

あなたは、作品を守ることと、見てもらうことを、両立できていますか。

守るだけにすると、どうなるか

展示中に作品が触られて壊れた例が、全国でどれくらいあるか。調べましたが、全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

ただ、壊れやすい作品を守ることと、見てもらうことの間で迷う作家は多いはずです。

多くの人が行き交う場では、思わぬ手が伸びることもあります。すべての人を見張ることは、作家一人ではできません。

かといって、ガラスの箱にすべてしまい込めば、作品の質感は伝わりにくくなります。遠くに離して置けば、見る人との距離も遠くなります。

壊れやすい作品ほど、光の通り方や手ざわりの気配が魅力です。その魅力が伝わらなければ、展示に出した意味が薄れてしまいます。

守ることばかり考えると、見てもらうことが後回しになります。見てもらうことばかり考えると、作品が傷つくおそれがあります。

心配のあまり、壊れやすい作品を展示に出さなくなる作家もいます。けれど、それでは作品が人と出会う機会そのものが失われてしまいます。

その間で、ちょうどよい工夫を見つけることが大切です。

守りすぎても、
作品は伝わらない。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい展示室で、白い台の上のガラスの作品を、少し離れて眺める人の後ろ姿
ちょうどよい距離で作品を見る(イメージ)

わたしは、50歳を過ぎて初めてアートを買いました。本物の作品の前に立ったとき、原画の力を思い知らされました。一目惚れで、その場で買うと決めていました。

外から見ていて思うのは、作品の見せ方には、まだ工夫の余地があるということです。アートだけを展示して販売していても、それでは伝わりません。

洋服は、モデルが着た姿を見て欲しくなります。作品も、玄関やカフェ、ホテルのロビーに飾った姿を見るからこそ、飾りたいと思うのです。

見せ方を工夫し、心を込めて、買う方のことを考えて表現しているか。作家のみなさんに、そこに気づいてほしいと思っています。

では、壊れやすい作品の場合はどうでしょうか。どう置けば安全で、しかも美しく見えるか。ここからは、一般的な考え方をお伝えします。

見る人に安心して近づいてもらえる置き方は、作家の思いやりでもあります。

大切に扱ってほしいという気持ちは、置き方と言葉で伝えられます。見る人もその気持ちを感じ取れば、自然と手を引いてくれるかもしれません。

守り方も、
見せ方のひとつ。

答え合わせ:守りながら、見せられるか

この感覚を、数字で確かめようとしました。

けれど、壊れやすい作品を、飾った姿で見せたときにどう選ばれるのか。それを調べた全国の調査には、たどり着けませんでした。

「飾った姿を見るからこそ、飾りたいと思う」という感覚は、今回は確かめられませんでした。ただ、ケースや台の上に美しく置かれた姿は、見る人に「触らずに眺める物」だと自然に伝えてくれます。

会場での展示だけが、作品を見せる方法ではありません。部屋に置いた姿を写真で見せる方法もあります。壊れやすい作品ほど、何度も運ばずに見てもらえる形があると安心です。

守る工夫と見せる工夫がそろえば、作家は在廊しない日も、落ち着いていられます。見る人も、安心して作品に近づけます。

作品が無事に会期を終えられれば、次の展示にも、迷わず同じ作品を出せます。

無事に終えた展示の経験は、次の会場との話し合いでも役に立ちます。どんな置き方なら安全だったかを、具体的に伝えられるからです。

安心して近づける展示が、
作品を引き立てる。

7ARTSで、一緒にできること

明るいリビングの木の棚に飾られた、色鮮やかな陶器の作品
暮らしの中で大切に飾られる作品(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。展示中の作品を見守ったり、壊れたときに補ったりする仕組みは、7ARTSにはありません。

そのうえで、作家が今日からできることをお伝えします。

1つめは、作品のそばに、短い言葉の札を置くことです。「近くでご覧ください。お手は触れずに」のように、見ることは歓迎していると伝えます。

2つめは、置き方を工夫することです。台の奥に置く、低い柵や台の段差で距離をつくるなど、自然に手が届きにくい形にできます。

台の大きさに余裕を持たせ、作品の周りに少し空きをつくるだけでも、手や鞄が当たりにくくなります。

3つめは、在廊できない日のための相談です。会場の担当者に見守りをお願いできるか、前もって聞いておきましょう。

壊れたときの責任や補償については、会場との取り決めが大切です。保険のことは損害保険の会社に、責任の分け方は弁護士など専門家に相談してください。

見てほしい気持ちを、
札の一言にこめる。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。触られやすい作品を選ぶ、札の一言を書く、置き方を1つ変える
今日、作家がやること

次に展示したい作品の中から、いちばん触られやすい作品を1点選んでみてください。

その作品のそばに置く札の一言を、紙に書いてみます。禁止の言葉だけでなく、見てほしい気持ちも添えてください。

最後に、その作品の置き方を1つだけ変えてみます。台の奥へ下げる、段差をつける。小さな変化でかまいません。

見る人を遠ざけずに作品を守る形が、1つずつ増えていきます。うまくいった置き方は、写真に残しておきましょう。

札の一言は、作品ごとに少しずつ変えてもかまいません。作品の見どころを一言添えれば、見る人は手ではなく目で楽しんでくれます。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • アートフェア東京の来場者:アートフェア東京の発表(2019年・2024年)、報道(2026年)
  • 買った理由:「日本のアート産業に関する市場調査2021」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(文化庁委託事業)