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作家の悩み百選 No.094

体力が落ちて、大作が作れない

「体力が落ちて、大きな作品が作れなくなってきた」。体と相談しながら、作家として作り続けるための考え方をまとめます。

朝の光が入るアトリエで、イーゼルに向かう人の後ろ姿

こんな変化を感じていませんか

「体力が落ちて、大きな作品が作れなくなってきた」

以前は一日中、大きな画面に向かえた。今は、脚立にのぼるのも、重いキャンバスを動かすのも、ひと苦労になった。

大きな作品こそ、自分らしさだと思ってきた。それが作れなくなると、作家としての自分まで小さくなったように感じる。

思うように体が動かない日が続くと、アトリエに入ること自体が億劫になる。そんな話も、作家の方から聞きます。

ここで、ひとつ考えてみてください。あなたの作品の力は、画面の大きさだけで決まるものでしょうか。

大きさは、作品の魅力の1つです。けれど、それがすべてではありません。長い年月で磨いてきた感覚は、画面が小さくなっても消えません。

積み重ねた目と手は、
どの大きさにも生きる。

体の変化は、誰にでも訪れます。それを嘆くか、新しい作り方を探すきっかけにするかで、これからの制作は大きく変わります。

あなたは、作品の大きさと、作家としての価値を、同じものだと思っていませんか。

無理を続けると、どうなるか

体力の変化で制作が変わった作家が何%いるか。全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

ただ、年齢とともに体の使い方が変わっていくことは、誰にとっても避けられないことです。

年を重ねながら制作を続ける作家も、決して少なくないはずです。体と相談しながら作る工夫は、多くの作家にとって身近な問題になっています。

体力の変化を無視して、以前と同じ大きさにこだわり続けると、体を痛めるおそれがあります。けがをすれば、制作そのものが止まってしまいます。

反対に、作れないことを理由に筆を置いてしまえば、作品はそこで途切れます。どちらも、作家にとって何よりつらいことです。

体の変化は、ある日突然ではなく、少しずつ訪れます。だからこそ、気づいたときに作り方を見直せるかどうかが分かれ目になります。

無理をして1点の大作を仕上げるより、体に合った作品を何点も作り続ける。そのほうが、作品が人に届く機会は増えていきます。

大切なのは、体の変化を受け止めたうえで、続け方を選び直すことです。

やめるか、無理するか。
その間に道がある。

外から見てきた、わたしの感覚

明るいアトリエの木の机で、小さめの画面に色を重ねる作家の手元
体に合った大きさで描く(イメージ)

わたしは、50歳を過ぎて初めてアートを買いました。それまで、アートにはそれほど興味がありませんでした。作家の友人もいなければ、作品に触れる機会もほとんどありませんでした。

本物の作品の前に立ったとき、原画の力に心をつかまれました。一目惚れで、その場で買うと決めていました。

外から見てきて思うのは、一般の人にも、欲しいと思えば買えるお金はあるということです。とても高い作品は無理でも、一般的な価格の作品なら、買える人はたくさんいます。

こちらの市場のほうが、圧倒的に大きいのではないか。これが、わたしの感覚です。

ここからは、一般的な話です。暮らしの中に作品を迎える人にとって、壁の広さには限りがあります。玄関や廊下、寝室の小さな壁。そうした場所に合う作品を探している人もいるはずです。

大きな作品だけが、求められているのでしょうか。体に合った大きさで作った作品にも、迎えてくれる暮らしがあるかもしれません。

新しい売り方は、最初は「そんな売り方で大丈夫?」と思われるかもしれません。でも、その売り方でも十分に売れると、わたしは考えています。

暮らしに迎えられる大きさが、
きっとある。

答え合わせ:大作でなければ、選ばれないか

この感覚を、数字で確かめようとしました。

けれど、どの大きさの作品がよく選ばれているのか。それを調べた全国の調査には、たどり着けませんでした。

暮らしの中に作品を置きたい人が、いちばん多いのです。部屋の壁に合う大きさの作品にも、選ばれる場面は十分にあると読めます。

「一般の人の市場のほうが大きいのではないか」という感覚は、今回は確かめられませんでした。住まいの壁や棚には、手ごろな大きさの作品のほうが迎えられやすい場面も、多いはずです。

体に合った大きさで作り続けられれば、制作は止まりません。作品の数が増えれば、出会える人の数も増えていきます。

小さな作品は、初めて作品を買う人にとっても、迎えやすい大きさかもしれません。大きさが変わることは、新しい出会いの入口が増えることでもあります。

年を重ねながら作り続ける作家の姿は、同じ世代の人の励みにもなるはずです。

体に合った大きさで、
作り続ける。

7ARTSで、一緒にできること

明るい玄関の白い壁に飾られた、小さめの色鮮やかな作品
玄関の小さな壁にも、作品の居場所がある(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。体の不調を和らげたり、制作を手伝ったりする仕組みは、7ARTSにはありません。

そのうえで、作家が今日からできることをお伝えします。

1つめは、今の体で、無理なく向かえる大きさを確かめることです。1日に何時間なら、痛みなく制作を続けられるかも書き留めてください。

2つめは、作業の道具や姿勢を見直すことです。座って描ける台にする、重い物は人に運んでもらうなど、体への負担を減らす工夫は1つずつ足せます。

3つめは、大きな作品を、いくつかの画面に分けて考えることです。並べて1つの作品にする形なら、1枚ずつは小さく作れます。

4つめは、制作の合間に、体をほぐす時間を入れることです。ときどき立ち上がるだけでも、腰や肩の負担は変わってきます。

痛みや体の不調がある時は、無理をせず、医師に相談してください。長く作り続けるためにも、体の声を後回しにしないでください。

体を守ることも、
作家の大切な仕事。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。無理なく作れる大きさを測る、1日の制作時間を書き留める、次の作品の大きさを決める
今日、作家がやること

今日は、今の体で無理なく向かえる画面の大きさを、実際に測ってみてください。

次に、休みを入れながら、1日に何時間なら続けられるかを書き留めます。

その2つが分かったら、次の作品の大きさを決めてください。体に合った大きさが決まれば、制作は止まらずに続いていきます。

大きさが変わっても、あなたが作ってきた時間は消えません。その時間ごと、新しい作品に込めていきましょう。

決めた大きさと時間は、紙に書いてアトリエに貼っておきましょう。張り切りすぎた日に、自分を止める目印になります。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 75歳以上の人数:厚生労働省の資料(2025年の推計)
  • 買った理由:「日本のアート産業に関する市場調査2021」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(文化庁委託事業)