
こんな心配はありませんか
「年を取ったあと、作品がどうなるか心配」
アトリエにも押し入れにも、何十年分の作品が並んでいる。自分がいなくなったら、この作品たちはどうなるのだろう。
家族は作品の値打ちが分からないかもしれない。処分されてしまうのではないか。そう思うと、胸が苦しくなる。
作品の一つひとつに、その年の暮らしや出会いが刻まれています。それが行き場を失うかもしれないと思うと、筆を持つ手も重くなります。
ここで、ひとつ考えてみてください。あなたの作品について、いちばん詳しく話せるのは誰でしょうか。
答えは、あなた自身です。どの作品に、どんな思いを込めたのか。それを知っているのは、作った本人だけです。
作品の思いを残せるのは、
今のあなた。
心配を胸にしまったままでは、何も変わりません。元気な今だからこそ、できる準備があります。
あなたは、作品の行き先について、家族と話したことがありますか。
考えないままだと、どうなるか
作家が亡くなったあと、作品がどうなったか。全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。
ただ、作家自身が年齢をどう感じているかは、数字で分かります。芸団協が2025年に、芸術家へ聞いた調査です。

10年後に今の仕事を続けていないかもしれない、と思う理由を聞いています。
いちばん多いのは、「年齢」の76.6%でした。
作家も、作品を買ってきた人も、同じように年を重ねています。作品の行き先は、作家だけでなく、作品を持つ人にとっても身近な問題です。
作品の行き先を決めないままだと、残された家族が判断に迷います。どれが大切な作品で、どれを誰に託したかったのか。本人に聞けなければ、家族には分かりません。
大きな作品や数の多い作品は、置き場所にも困ります。思いの込もった作品が、まとめて処分されてしまうこともあり得ます。
作品の値打ちを知らない人が見れば、どの作品も同じように見えてしまいます。題も制作年も分からなければ、大切に残す理由も見つけにくくなります。
元気なうちなら、時間をかけて考えられます。けれど、あとに回すほど、考える力も時間も少なくなっていきます。
作品の行き先を決めることは、作家にしかできない最後の仕事の1つです。誰かに任せたままでは、作品の思いまでは伝わりません。
先延ばしにするほど、
選べる道は少なくなる。
外から見てきた、わたしの感覚

わたしは、50歳を過ぎて初めてアートを買いました。それまで、アートとはほとんど縁がありませんでした。
本物の作品の前に立ったとき、原画の力を思い知らされました。一目惚れで、その場で買うと決めていました。
あとから思ったのは、もっと早く出会いたかったということです。50歳を過ぎるまで出会わなかったのは、もったいない人生だったと感じています。
外から見ていて、思うことがもう1つあります。売れていない作家にも、本当に素敵な作品を描く人がたくさんいます。その作品が、まだ届くべき人に届いていません。
ここからは、一般的な見方です。アトリエに眠っている作品にも、まだ出会っていない誰かがいるかもしれません。
そう考えると、作品の行き先を考えることは、悲しい話だけではなくなります。作品が、次に誰の暮らしに入っていくのかを考えることでもあるからです。
終わりの準備ではなく、
次の持ち主への橋渡し。
答え合わせ:作品を受け継ぐ人は、いるか
この感覚を、数字で確かめようとしました。
けれど、作家が亡くなったあと、作品を受け継ぎたいと思う人がどれくらいいるのか。それを調べた全国の調査には、たどり着けませんでした。
作品を買ったことがない人のほうが、ずっと多いのです。まだ作品に出会っていない人が、これだけいます。
「素敵な作品が、まだ届くべき人に届いていない」という感覚は、今回は確かめられませんでした。ただ、行き先を決めずにいれば、届くはずの人にも届かなくなります。
作品を待つ人が多いなら、アトリエの作品にも、次の持ち主が見つかる道はあります。元気なうちに作品を外へ出しておけば、作品は自分の手で次の人へ渡せます。
行き先が決まった作品が1点ずつ増えるほど、心配は少しずつ小さくなっていきます。家族にとっても、作品は「困る物」ではなく「託された物」になります。
自分の目で見届けた行き先なら、作品の思いもそのまま伝わります。それは、作家にとって何よりの安心ではないでしょうか。
年齢を気にする作家が多い今、同じ心配を抱える作家は少なくないはずです。だからこそ、早めに動き出すことが大切です。
手渡せるうちに、
次の持ち主へ。
7ARTSで、一緒にできること

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。作品を預かったり、亡くなったあとの行き先を決めたりする仕組みは、7ARTSにはありません。
そのうえで、作家が今日からできることをお伝えします。
1つめは、手元の作品の一覧をつくることです。題、制作年、大きさ、込めた思いを一言ずつ。一覧があれば、家族も作品の重みが分かります。
2つめは、特に大切な作品について、誰に託したいかを書き留めておくことです。家族と一度話しておくと、迷いが減ります。
3つめは、元気なうちに、作品を見てもらう場所に出しておくことです。作品が人の目に触れていれば、次の持ち主と出会う機会が生まれます。
一覧は、紙でもスマートフォンでもかまいません。作品の写真を1枚ずつ添えておくと、家族にも分かりやすくなります。
遺言や相続など、法律や税金に関わることは、一般的な説明だけでは決められません。弁護士や税理士、司法書士など専門家に相談してください。
作品の一覧は、
家族への手紙になる。
今日、ひとつだけやってみてください

今日は、手元の作品の中から、特に大切な5点を選んでみてください。
その5点それぞれに、題と制作年、込めた思いを一言ずつ書き添えます。長い文でなくてかまいません。
書き終えたら、その紙の置き場所を家族に伝えてください。5点の一覧が、作品の行き先を考える最初の一歩になります。
5点ができたら、次の5点へ。少しずつ増やしていけば、何十年分の作品も、いつか1冊の記録にまとまります。
家族に見せるときは、作品の前で一緒に話せると、なお伝わります。
作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する
出典
- 芸術家の働き方:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)「芸術家のセーフティネットの構築に関する調査研究報告書」(2026年3月)



