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作家の悩み百選 No.078

会社では、絵のことを言えない

「会社では、絵を描いていることを誰にも言えない」。黙ったままの制作を、外から見てきた感覚と数字で考えます。

昼の光が入る明るい部屋で、仕事かばんの横に描き上げた作品が置かれている

こんな気持ちはありませんか

「会社では、絵を描いていることを誰にも言えない」

平日は会社で働き、夜と週末に絵を描く。制作の時間は、一日の中でいちばん自分らしくいられる時間だ。

それでも、職場では誰にも話していない。笑われたらどうしよう。仕事に身が入っていないと思われたらどうしよう。

制作のことを話せないまま、作品だけが静かにたまっていく。誰にも言えない分、続ける理由も自分の中だけで支えることになります。

休み明けに「週末は何をしていたの」と聞かれ、とっさに「家でのんびり」と答えてしまう。そんな場面を、作家の方からよく聞きます。

ここで、ひとつ考えてみてください。いちばん身近な人たちが、あなたの作品を一度も見たことがないのではないですか。

黙っていることが悪いのではありません。ただ、作品にとっては、見てもらえる機会を1つ逃しているとも言えます。

毎日会う人ほど、
あなたの作品を知らない。

あなたは、作品のことを話せる相手が、職場に1人でもいますか。

黙ったままだと、どうなるか

会社員の作家が、職場で制作を話しているかを調べた全国の調査は、見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

代わりに、作品をつくる人の数を見てみます。文化庁の調査で、この1年に文学・音楽・美術などの作品を「創作した」人を聞いています。

答えた人は2.9%でした。あなたの職場でも、作品をつくっている人は、ほとんどいないはずです。

作る人が少ないからこそ、話しにくい。けれど、それは珍しい存在だということでもあります。

アートが身近にない人にとって、作家は遠い存在です。だから「絵を描いている」と言いにくく感じるのかもしれません。

ただ、黙ったままでいると、身近な人がアートに出会うきっかけも生まれません。同じ職場の人たちは、作品に出会っていないだけかもしれないのです。

まだアートを買ったことのない身近な人は、これから作品と出会うかもしれない、大切な人たちです。

作品を知られないまま年月が過ぎれば、制作はずっと「誰にも言えないこと」のままになります。

言えないままでは、
作品は隠れたまま。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい部屋の木の机の上に、描きかけと描き上げた作品が並び、窓から昼の光が差している
仕事のあとの、制作の時間(イメージ)

わたしはアート業界の人間ではありません。50歳を過ぎるまで、アートにそれほど興味はありませんでした。

外から見ていて思うのは、一般の人にはアートに出会う場が少ないということです。

欲しいと思えば買えるお金を持っている人は、たくさんいます。けれど、出会う場が無ければ、作品を買うきっかけも生まれません。足りないのは、アートを見てもらえる環境です。職場も、その環境の1つになり得ます。

作家の友人がいなければ、一般の人がアートに触れる機会はほとんどありません。これが、業界の外にいたわたしの実感です。

裏返せば、あなたは職場の誰かにとって、初めての作家の知り合いになれる人です。

職場は、毎日たくさんの人と顔を合わせる場所です。そこに1人でも作品を知る人がいれば、出会いの輪は少しずつ広がります。

もちろん、話すかどうかは、あなたが決めることです。会社の雰囲気や、仕事との兼ね合いもあるでしょう。

ただ、もし1人でも作品を見せられる相手がいれば、その人にとっての出会いになるかもしれません。わたしが実物の作品に出会い、心をつかまれたときのように、です。

あなたが、
誰かの初めての作家になる。

数字で答え合わせ:作る人は少なく、楽しむ人は多い

では、職場の人は、どんな楽しみを持っているのでしょうか。総務省の調査で、10歳以上の人が過去1年に何をしたかを聞いています。

趣味や娯楽を楽しんだ人は86.3%でした。ほとんどの人が、何かしらの楽しみを持っています。

特別な収集家だけが買っているのではありません。職場の同僚のように、ふだんアートと縁のない人も、きっかけがあれば作品を選びます。

記念品やプレゼントとして作品を選ぶ人もいます。同僚の退職祝いや、取引先への贈り物に、知り合いの作家の作品を選ぶ。そんな出会い方もあるでしょう。

「作家の友人がいなければ、アートに触れる機会がない」という感覚は、一部当たりです。作品をつくる人が少ないことは、数字で確かめられました。楽しみを持つ人の中に、アートに触れたい人がどれくらいいるかまでは分かりません。

作品のことを話せる相手が1人できれば、制作は人に話せる楽しみに変わります。感想をくれる人が身近にいれば、描く時間にも張り合いが出ます。

同僚の机に、あなたの小さな作品が飾られる。そんな日が来れば、職場は作品を見てもらえる場所の1つになります。

隠す制作から、
分かち合う制作へ。

7ARTSで、一緒にできること

明るいオフィスの白い壁に飾られた作品の横を、人が通り過ぎていく後ろ姿
職場の壁にも、作品の居場所はある(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。職場で話すかどうかは、作家ご本人が決めることだからです。

そのうえで、今日からできることを3つ挙げます。

1つ目は、会社の決まりを確かめることです。作品を売るなら、副業がどう扱われているかを先に見ておきましょう。分からなければ、人事の担当者に相談してください。

2つ目は、話せる相手を1人だけ選ぶことです。全員に話す必要はありません。気心の知れた同僚に、スマホの写真で1枚見せるところから始められます。

3つ目は、作品の売上が出たときの税金です。会社員の副業の扱いは人によって違うので、税理士など専門家に相談してください。

作品を売るかどうかと、作品を見せるかどうかは、別の話です。決まりを確かめ、準備ができてから、自分の言葉で伝えればいいのです。

小さな一言が、
作品の扉をひらく。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。会社の就業規則を確かめる、作品を見せられる人を1人思い浮かべる、その人に見せる1枚を選ぶ
今日、作家がやること

まず、会社の就業規則を開いて、副業についての決まりを確かめてみてください。作品を売るかどうかを考える前の、大切な準備です。

次に、作品を見せてもいいと思える人を、職場の中から1人だけ思い浮かべます。

最後に、その人に見せる1枚を選んでおきましょう。いちばん自信のある作品より、話のきっかけになりやすい作品がおすすめです。

選んだ作品は、スマホに入れておくだけで十分です。話の流れで聞かれたときに、すぐに見せられます。

見せる1枚が決まれば、言えなかった制作が、話せる制作に変わり始めます。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 鑑賞の状況:文化庁「文化に関する世論調査」報告書(2024年3月・全国18歳以上24,996人)
  • 美術鑑賞の行動者率:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活行動に関する結果」(2022年8月)