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作家の悩み百選 No.073

公募展に落ちて、描けなくなったとき

「公募展に落ちて、絵が描けなくなった」。買う人が何で作品を選んでいるかを数字で見て、もう一度筆を持つ理由を探します。

明るいアトリエの白い壁に掛けられた、色鮮やかな作品と、木の床に置かれた絵筆

こんなことはありませんか

「公募展に落ちて、絵が描けなくなった」

何か月もかけて仕上げた作品を、思い切って公募展に出した。結果の通知を開いて、入選者の中に自分の名前がないと知った。

その日から、筆を持っても手が動かない。何を描いても、また落ちるのではないかという声が、頭の中で鳴り続けている。

公募展に出すまでの努力が大きいほど、落ちたときの痛みも大きくなります。描けなくなるのは、それだけ本気だった証です。

ここで、ひとつ考えてみてください。落ちたのは、あなたの作品の価値でしょうか。それとも、その公募展の物差しに合わなかっただけでしょうか。

公募展には、それぞれの目的と審査の物差しがあります。1つの物差しで外れたことが、作品の価値のすべてを決めるわけではありません。

1つの物差しで、
作品のすべては決まらない。

あなたは、1回の結果で、作品の価値まで決めてしまっていませんか。

描けないままだと、どうなるか

公募展にどれくらいの作家が応募し、何%が入選しているのか。全国をまとめた調査は、見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

ただ、発表の入口が限られていることは、多くの作家が感じていることでしょう。

発表の入口は、もともと限られています。公募展もその入口の1つで、入選の枠にも限りがあります。

公募展の結果は、ひとつの審査の答えです。けれど落ちた直後は、それが世の中すべての答えのように感じてしまいます。

描けない日が長くなるほど、もう一度筆を持つまでの壁も、高くなっていきます。

落ちたことを引きずって描けない日が続くと、作品は増えず、見せる機会も遠のきます。1回の結果が、次の何年分もの制作を止めてしまうことさえあります。

1回の結果に、
何年分も止めさせない。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい白い部屋の壁に飾られた色鮮やかな作品の前で、足を止める人の後ろ姿
暮らしの中で、作品と出会う(イメージ)

わたしはアート業界の外から来た人間です。公募展の審査員でもなければ、美術の専門家でもありません。

そんなわたしが50歳を過ぎて、初めてアートを買いました。実物の前に立ち、一目惚れでした。決め手は、目の前の作品の力でした。

外から見ていて思うのは、一般の人にも、作品を買えるお金はあるということです。暮らしの中で作品と出会い、気に入って買う人もいます。

ただ、一般の人には、アートに出会う場が少ない。足りないのは、アートを見てもらえる環境です。入選していない作家にも、本当に素敵な作品を描く人はたくさんいると、わたしは感じています。

公募展は、作家が腕を試す大切な場です。そのうえで、作品を見てもらう場所を、もう1つ持っておく。そうすれば、1回の結果に、作品の行き先をすべて預けずに済みます。

審査員の目も、暮らしの中の目も、どちらも作品を見る大切な目です。どちらか1つだけで、作品の行き先を決める必要はありません。

選ぶのは審査員だけではない。
暮らしの中にも目がある。

答え合わせ:選ぶのは、審査員だけか

この感覚を、数字で確かめようとしました。

けれど、公募展で落ちた作品が、ほかの場所でどれくらい選ばれているのか。それを調べた全国の調査には、たどり着けませんでした。

買う人の多くは、自分の部屋に合うか、自分が気に入るかで選んでいます。誰かの評価より、自分の目で決めているのです。

「作品を選ぶのは、審査員だけではない」という感覚は、今回は確かめられませんでした。ただ、わたし自身は審査員ではなく、作品の前で心が動いたひとりの買い手でした。

入選した作品だけが、部屋に飾られるわけではありません。気に入ったから、部屋に合うから。そんな理由で選ばれる作品は、たくさんあります。

公募展の結果と、買う人の選び方は、別の物差しです。その2つを分けて考えるだけで、作品を見る目は少し軽くなります。

審査に通らなかった作品が、誰かの暮らしの中で長く愛される。そんな行き先も、作品には開かれています。

審査員の目と、まだ作品と出会っていない人の目は、別の物差しを持っています。

審査の結果は、あくまで1つの場での答えです。そう分けて考えられれば、落ちた作品にも、まだ行き先があると思えるようになります。

落ちた作品も、誰かの部屋に飾られれば、その部屋の主役になれます。公募展の結果とは別に、作品を見てもらう道があると分かれば、また筆を持つ理由が見つかります。

落ちた作品も、
誰かの部屋では主役になる。

7ARTSで、一緒にできること

明るい寝室の白い壁に飾られた色鮮やかな作品と、朝の光が差し込む窓
しまい込まずに、見える所へ(イメージ)

先に正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。落ち込んだ気持ちを立て直したり、描けない状態を治したりする仕組みは、7ARTSにはないからです。

そのうえで、作家が今日からできることがあります。落ちた作品を、しまい込まずに、自分の部屋の見える所に飾ってみることです。

毎日目にすると、作品の良い所と、直したい所が、少しずつ落ち着いて見えてきます。次に描くときの手がかりにもなります。

気持ちが少し落ち着いたら、その作品を、信頼できる人に見てもらうのもひとつです。家族や友人の素直な感想が、次の作品の手がかりになることもあります。

作品を見てもらう場所としては、7arts.jpの作家ごとのページもあります。

描けない日や、眠れない日が長く続くときは、ひとりで我慢しないでください。医療機関や、自治体の心の相談窓口など、専門の相談先に話してみてください。

しまい込まずに、
見える所に飾ってみる。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。落ちた作品を見える壁に飾る、好きな所を3つ書き出す、1つを次の作品で使うと決める
今日、作家がやること

落ちた作品を、自分の部屋のいちばん目に入る壁に飾ってみてください。

次に、その作品の好きな所を3つ、紙に書き出します。色、形、描いていたときの気持ち。誰かの評価ではなく、あなたの目で選んでください。

最後に、その3つの中から1つを選び、次の作品で必ず使うと決めます。好きな所を引き継げば、落ちた作品は、次の作品の出発点になります。

書き出した3つは、作品の裏や手帳に残しておいてください。次に迷ったとき、自分の好きな所を思い出す手がかりになります。

公募展には、これからも挑戦してかまいません。1回の結果を、次に描く理由に変えていけばいいのです。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 作家の数:文化庁資料(2020年)/ギャラリー・画商などの数:文化庁「The Japanese Art Market 2025」(2024年時点・骨董店なども含む)
  • 買った理由:「日本のアート産業に関する市場調査2021」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(文化庁委託事業)
  • 作品を買ったことがある人の割合(約16%):「日本のアート産業に関する市場調査2018」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(2019年3月4日発表・約2万人を対象)