作家の悩み百選 No.065
依頼は来るのに、自分の作品は届かない
「依頼の絵は描いているが、自分の作品は買い手がいない」。仕事のお客さんと作品のお客さんの違いを、数字と外からの感覚で見ます。

こんな悩みはありませんか
「依頼の絵は描いているが、自分の作品は買い手がいない」
似顔絵、挿絵、お店の看板。頼まれた絵なら、締め切りに追われるほど仕事がある。
けれど、自分が本当に描きたくて描いた作品には、なかなか買い手がつかない。依頼の絵を描くほど、自分の作品は棚の奥へ積み上がっていく。
依頼の絵には、相手の注文に応える工夫が詰まっています。自分の作品には、あなただけの見方が詰まっています。どちらも、同じ手から生まれたものです。
ここで、ひとつ考えてみてください。依頼してくれた人は、あなたの作品のことを知っているでしょうか。
仕事の絵を喜んでくれた人が、あなた自身の作品を見る機会は、どれくらいあるでしょうか。
仕事のお客さんは、
まだ作品を知らない。
腕は認められているのに、作品が届いていない。その差がどこから来るのかを、一緒に考えてみます。
あなたの作品を、依頼の外で見られる場所はありますか。
依頼だけに頼ると、どうなるか
まず、依頼の仕事そのものの動きを見てみます。芸団協が2025年に、2019年と比べた仕事の量を芸術家に聞いています。
依頼されて行う芸術の仕事は、「減った」が「増えた」より7.3ポイント多くなっていました。依頼の仕事も、いつまでも同じだけあるとは限らないのです。
依頼の絵は、頼む人がいて初めて生まれます。一方、自分の作品は、見た人が欲しいと思って初めて買われます。買われ方が、まったく違うのです。
依頼の絵には、締め切りと報酬があります。自分の作品には、どちらもありません。だから、つい依頼の方を先にしてしまう。多くの作家に起こる、ごく自然な流れです。
依頼の仕事だけを続けていると、作品を見てもらう場所づくりは、いつも後回しになります。忙しい時期ほど、その傾向は強まります。
その間にも、自分の作品は増えていきます。誰にも見られないまま積み上がると、描きたい気持ちまで薄れていきかねません。
依頼の仕事は、腕の証です。ただ、その仕事の先に、自分の作品の買い手が自然に生まれるわけではありません。
依頼が増えても、
作品の買い手は増えない。
外から見てきた、わたしの感覚

わたしはアート業界の外の人間です。外から見ていて、気になってきたことがあります。
これまで作品は、ギャラリーや画商が売ってきました。その売り方では、お客さんはギャラリーにつき、作家にはつきにくい。取り扱いが終わると、売れなくなる作家もいます。
依頼の仕事でも、作家の方から同じような話をよく聞きます。お客さんは、頼んだ仕事や、間に入った会社につきがちです。あなたの作品のお客さんには、まだなっていないのです。
だから、作家が自分のお客さんを持ち、直接届けられる環境を持つこと。それが、これからは欠かせないと考えています。
わたしが初めてアートを買ったとき、心を動かされたのは原画の力でした。売れていない作家にも、本当に素敵な作品を描く人はたくさんいます。
その作品が、まだ新しい市場に届いていないだけなのです。
依頼の仕事で出会った人の数を、思い浮かべてみてください。その人たちが、あなた自身の作品を一度でも見ていれば、つながり方は変わっていたかもしれません。
仕事の腕はある。
足りないのは、作品の売り場。
数字で答え合わせ:依頼の仕事も、減っている
この感覚を、数字で確かめようとしました。
けれど、自分のお客さんを持つ作家と持たない作家で、続け方がどう違うのか。それを比べた全国の調査には、たどり着けませんでした。
わたしが作品を買ったとき、作家の名前は知りませんでした。作品そのものを見て、決めたのです。
「作家が自分のお客さんを持つことが欠かせない」という感覚は、一部当たりです。依頼の仕事が減る傾向にあることは、数字で確かめられました。ただ、お客さんを持つことの効き目までは、数字では分かりません。
依頼の仕事で鍛えた腕と、自分の作品の売り場。その両方を持てば、収入の柱は2本になります。仕事が少ない月も、作品が誰かに届く道が残ります。
そして、依頼で知り合った人が、いつか作品のお客さんになることもあります。仕事の絵と作品が、同じ作家の名前でつながっていくからです。
売り場があれば、依頼の合間に描いた1点も、すぐに誰かの目に触れます。作品が増えるほど、選んでもらえる機会も増えていきます。
腕と売り場がそろえば、
柱は2本になる。
7ARTSで、一緒にできること

7ARTSは、作家が自分の作品の売り場を持つための場所を、一緒につくっています。
7arts.jpには、作家ごとのページがあります。自分の作品を載せておけば、見た人がそのまま購入やオファーを申し込めます。
オファーは9種類あり、作家が「受けられる」と選んだものだけが届きます。受けたい依頼だけを選べるので、制作の時間を守りやすくなります。
サイトは5か国語で表示できます。日本で制作を続けながら、海外の人にも作品を見てもらえます(解決策2 外国語表示)。
作品を部屋やお店に飾った姿を見せる仕組みもあります(解決策1 飾ってみて)。
値段に迷ったときは、値段の目安を出す道具も使えます。依頼の料金とは別に、作品の値段を考える手がかりになります。
依頼の仕事で培った腕は、作品のページを見た人にも伝わります。仕事の絵と自分の作品を並べて見せれば、作家としての幅が伝わります。
ただ、売り場があるだけでは、作品は見つけてもらえません。依頼で知り合った人に、自分の作品のページを伝えるのは、作家自身です。そこから、一緒に始めましょう。
依頼の先に、
作品の入口をつくる。
今日、ひとつだけやってみてください

依頼の仕事と同じくらい自信のある、自分の作品を3点選んでみてください。
次に、その3点を作家ページに載せ、ひとことずつ説明を添えます。何を思って描いたのか、短くてかまいません。
最後に、名刺や納品のあいさつに、そのページの場所を書き添えてください。依頼の絵を受け取った人が、あなたの作品を知る入口になります。
ページを伝えるときは、「よければ、わたしの作品も見てください」と一言添えるだけで十分です。押しつけずに、見てもらう入口だけを渡します。
仕事の絵を喜んでくれた人は、あなたの腕をもう知っています。その人に作品を見せることは、売り込みではなく、出会いの機会を渡すことです。
作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する
出典
- 芸術家の働き方:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)「芸術家のセーフティネットの構築に関する調査研究報告書」(2026年3月)



