
こんな寂しさはありませんか
「公募展が終わると、作品はまた部屋の隅に戻る」
何か月もかけて描いた大作を、公募展に出す。入選して会場の壁に飾られた日は、誇らしい気持ちになります。
けれど会期が終わると、作品は梱包されて戻ってきます。壁から外され、部屋の隅で布をかぶったまま、次の出番を待つことになります。
会場で作品を見てくれた人は、たしかにいました。ただ、その人たちと作品がもう一度出会う道は、ほとんど残っていません。
ここで、ひとつ考えてみてください。公募展の会期は、作品が過ごす1年のうち、何日ぶんでしょうか。
1週間や2週間の展示のために、作品は残りの日々を眠って過ごしているのかもしれません。
会期中に「いいですね」と声をかけてくれた人の顔も、時間がたつと思い出せなくなります。作品と人をつなぐ糸が、会期の終わりとともに切れてしまうのです。
飾られるのは数日。
眠るのは、残りの一年。
あなたの部屋の隅にも、出番を待ったままの作品はありませんか。
会期が終わるたびに、作品が戻ってくると
作品を見に出かける人の数を、総務省の調査で見てみます。美術館などで美術を見た人の割合を、5年前と比べたものです。

2016年に19.4%だった人が、2021年には11.4%に減っていました。外出を控える動きがあった時期でもあります。
会場に足を運ぶ人は、もともと多くありません。その限られた人の中で、作品が選ばれるのを待つことになります。
公募展の来場者を全国でまとめた調査は、見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。
部屋の隅に戻った作品は、ほこりや湿気にさらされることもあります。眠っているあいだに、作品の状態まで変わってしまうかもしれません。
また、公募展の会場で作品が買われるとは限りません。見てもらうための場と、買ってもらうための場は、もともと役割が違うからです。
ただ、どんな展示にも会期があります。会期が終われば、会場で生まれた出会いも、そこでいったん途切れます。
作品が部屋の隅に戻るたびに、見てもらえる日はふり出しに戻ります。描いた作品が増えるほど、眠っている作品も増えていきます。
会期が終われば、
出会いもそこで途切れる。
外から見てきた、わたしの感覚

わたしはアート業界の人間ではありません。外から見ていて、強く感じていることがあります。
それは、売れていない作家にも、本当に素敵な作品を描く人がたくさんいることです。その作品が、まだ新しい市場に届いていません。
50歳を過ぎて初めてアートを買ったとき、わたしが感じたのは原画の力でした。画面の写真ではなく、本物の前に立って心をつかまれたのです。
その力を持った作品が、公募展の数日だけ外に出て、また部屋に戻っていく。それは、とてももったいないことではないでしょうか。
足りないのは作品の力ではなく、アートを見てもらえる環境。わたしは、そう考えています。
ひと握りの作家だけが売れているのは、ひと握りの市場の中でしか作品を見せていないからではないか。そんなふうにも感じています。
公募展は、作家にとって大切な腕試しの場です。そこで得た評価は、これからも力になります。そのうえで、会期のあとも作品が見られ続ける場所を、もう1つ持っておく。それが、わたしの考えです。
眠っている作品にも、
原画の力は宿っている。
数字で答え合わせ:見に出かけるのは、年に1回ほど
この感覚を、数字で確かめます。文化庁の調査で、文化芸術を外へ見に出かける頻度を聞いています。
見に出かけた人のうち、いちばん多いのは「年に1回程度」の49.2%でした。
出かける人でも、年に1回ほど。会期の数日に、ちょうどその人が来てくれる見込みは、決して大きくありません。
「素敵な作品が、まだ新しい市場に届いていない」という感覚は、一部当たりです。会場に人が来る機会そのものが少ないことは、数字で確かめられました。作品がどれだけ埋もれているかまでは、数字では測れません。
会期のあとも作品が見られる場所があれば、部屋の隅の作品にも、毎日出番が回ってきます。
今日描き終えた作品も、去年の公募展に出した作品も、同じように誰かの目に触れる。作品の数だけ、出会いの入口が増えていきます。
入選した作品なら、その経歴を添えて紹介できます。会場で見てくれた人が、あとから作品を探してたどり着くこともできます。会期の最終日は、作品が次の人と出会う準備の日になります。
展示が終わった日を、
新しい始まりの日に。
7ARTSで、一緒にできること

展示が終わったあとの作品にも、見てもらえる場所を。7ARTSは、それを作家のみなさんと一緒につくっています。
7arts.jpには、作家ごとのページがあります。作品を載せておけば、会期に関係なく、サイトから購入やオファーが届きます。
オファーは9種類あり、作家が「受けられる」と選んだものだけが届きます。部屋の隅にあった作品に、思いがけない声がかかるかもしれません。
会期が決まっている公募展とは違います。ページに載せた作品は、あなたが下ろすまで見てもらえる場所に残ります。
公募展の壁とは違う、部屋やお店に飾った姿を見せる仕組みもあります(解決策1 飾ってみて)。
サイトは5か国語で表示できます。日本で制作を続けながら、海外の人にも作品を見てもらえます(解決策2 外国語表示)。
ただ、どの作品を載せ、どんな言葉を添えるかを決めるのは作家自身です。公募展に出した理由や、描いたときの思いを書き添えてください。その言葉が、会場にいなかった人にも作品の背景を伝えます。
会期は終わっても、
作品の展示は続けられる。
今日、ひとつだけやってみてください

まず、公募展や展示から戻ってきて、部屋に置いたままの作品を数えてみてください。
次に、その中から1点だけ選び、明るい場所で写真を撮ってみてください。作品の全体が、ゆがまずに写るように撮るのがこつです。
最後に、どの公募展に出したか、どんな思いで描いたかを、短い言葉で添えて載せてみてください。1点が外に出た日から、部屋の隅の作品は眠らなくなります。
写真は、光がむらなく当たる昼間に、作品の正面から撮ると色が正しく伝わります。窓の近くで撮るのがおすすめです。
1点でかまいません。眠っていた作品が人の目に触れる経験が、次の1点を外に出す力になります。
作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する
出典
- 美術鑑賞の行動者率:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活行動に関する結果」(2022年8月)
- 鑑賞の状況:文化庁「文化に関する世論調査」報告書(2024年3月・全国18歳以上24,996人)



