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作家の悩み百選 No.042

スランプのとき、誰に話す?

「スランプのとき相談できる人がいない」。手が止まったときに、ひとりで閉じこもらないための考え方と相談先です。

朝の光が入るアトリエで、描きかけと描き上げた作品が並ぶ

こんなときはありませんか

「スランプのとき相談できる人がいない」

キャンバスの前に座っても、手が動かない。何を作りたかったのか、自分でも分からなくなる。

家族に話しても、「休めばいいよ」で終わってしまう。作家どうしの知り合いも少なく、同じ苦しさを分かってくれる人が見つからない。

描けない日が続くと、作ること自体が怖くなっていきます。

「才能がなくなったのでは」と考え始めると、筆を持つことさえつらくなります。

ここで、ひとつ考えてみてください。止まっているのは、手でしょうか。それとも、気持ちでしょうか。

手が止まった理由が分からないまま、ひとりで考え続けるほど、出口は見えにくくなります。

止まっているのは、
手より心かもしれない。

あなたは、描けない時間を、ひとりで過ごしていませんか。

ひとりで抱え込むと、どうなるか

作家がどれくらいスランプに悩んでいるか。全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

ただ、作品をよく知る相談相手の少なさは、数字から読み取れます。

そのかわり、ひとりで抱えがちな気持ちを調べた国の調査を見てみます。作家に限った数字ではありません。

孤独を感じることがある人の割合のグラフ。しばしば・常にある4.9%、時々ある15.8%、たまにある19.6%

孤独を感じることが「時々ある」人は15.8%、「たまにある」人は19.6%でした。「しばしば・常にある」を合わせると、およそ4割です。

スランプの悩みは、作品をよく知る相手でなければ話しにくいものです。話せる相手がいないまま、ひとりで抱え込む作家は多いはずです。

話す相手がいないと、同じ考えの中をぐるぐる回り続けます。「このまま描けなかったら」という不安が大きくなり、さらに手が重くなります。

スランプの間は、作品を外に出す機会も減ります。見てもらう機会が減ると反応も届かず、気持ちはさらに内側に向かいます。

止まった時間が長くなるほど、もう一度始めるのに力が要ります。スランプは、ひとりで抱えるほど長引きやすいのです。

相談できる人がいるかどうかで、止まっている時間の長さは変わるのかもしれません。

ひとりで考えるほど、
出口は遠くなる。

作家の方から、よく聞く場面

日差しの入る静かな美術館で、大きな色あざやかな作品の前のベンチに座る人の後ろ姿
ほかの人の作品の前で、気持ちが動き出す(イメージ)

作家の方から、よくこんな話を聞きます。

描けない日が何週間も続いた。アトリエにいるのがつらくて、ふらりと美術館や知らない展示に出かけた。そこで、ほかの人の作品の前から、しばらく動けなくなった。

家に帰ると、なぜか手が動いた。答えをもらったわけではない。ただ、作品を作る人の気持ちを、もう一度思い出せた、という話です。

作品の前で動けなくなった時間は、何かを学ぶための時間ではありません。作品から力をもらう時間です。その時間が、自分の作品に戻る道をひらいてくれます。

わたし自身、初めて原画の前に立ったとき、心をつかまれた日のことを覚えています。作品には、見た人の気持ちを動かす力があります。

その力は、作る人の心にも届くことがあります。ひとりで考えるより、外に出て、作品や人にふれる。それが、止まった手を動かすきっかけになることがあります。

話す相手は、答えを持っている人でなくてかまいません。聞いてもらうだけで、何に迷っているのかが見えてくることもあります。

描けない時期は、作家なら誰にでも訪れうるものです。大切なのは、その時期をひとりきりの部屋で過ごし続けないことです。

答えをもらうより、
外の空気にふれる。

答え合わせ:完璧な作品を、待っている人はいるか

スランプの根っこには、「もっと良い作品でなければ」という思いが隠れていることがあります。買う人は、何を求めているのでしょうか。

買う人が作品に完璧さを求めているのか。それを確かめた全国の調査には、たどり着けませんでした。

わたしが作品に心をつかまれたとき、細かな仕上がりを見比べたわけではありません。作品全体から受けた力に、心が動いたのです。

「完璧でなくても、見た人の心を動かす作品はある」という感覚は、今回は確かめられませんでした。数字で言い切れることではありません。ただ、わたしの一目惚れは、完璧さを探した結果ではありませんでした。

今の作品のままでも、届く人はいます。そう思えると、肩の力が少し抜けます。

スランプのときは、自分の作品の欠点ばかりが目に入ります。けれど、見る人が受け取るのは、細かな欠点よりも作品全体の空気です。

描けない時期に作った小さな作品が、あとで誰かのお気に入りになることもあります。

肩の力が抜けると、小さな作品から手を動かせるようになります。1枚描き終えた手ごたえが、次の1枚を呼んでくれます。止まっていた時間は、作品を見つめ直した時間に変わっていきます。

完璧でなくても、
心が動けば届く。

7ARTSで、一緒にできること

明るい木の机の上で、はがきほどの小さな紙に色を塗る手元と、横に並ぶ小さな作品
小さな1枚から、また手を動かす(イメージ)

正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。スランプの相談に答える仕組みは、今の7ARTSにはありません。

だからこそ、作家が今日からできることを書いておきます。

  • 描けない日の気持ちを、3行だけ書き出す
  • 自分と関係のない展示や美術館に、1つだけ出かける
  • 作品の話を聞いてくれる人を、1人だけ思い浮かべる

気持ちの落ち込みが長く続くときは、ひとりで我慢しないでください。眠れない・食べられないといった体の不調があるときも同じです。

かかりつけの医療機関や、お住まいの自治体の心の相談窓口に相談できます。厚生労働省の「まもろうよ こころ」のページにも、相談先がまとめられています。

小さな作品でも、描き上げたら作家ページに載せてみてください。誰かの目にふれることが、次の1枚を描く力になります。

同じように描いている人と話せる場は、地域の美術サークルや教室などにもあります。気負わず、のぞいてみるのも一つの方法です。

ひとりで止まらず、
話せる場所を持っておく。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。今の気持ちを3行書く、ほかの人の作品を1つ見に行く、小さな作品を1枚だけ描く
今日、作家がやること

今の気持ちを、紙に3行だけ書き出してみてください。「何が描けないのか」「何が怖いのか」。誰かに見せなくてかまいません。

次に、ほかの人の作品を見に行ってください。展示や美術館に行けなければ、画集を1冊開くだけでも十分です。

最後に、はがきくらいの小さな紙に、1枚だけ描いてみてください。上手さは問いません。

描けたら、その1枚を、目に入る場所に飾っておきましょう。

1枚描けたら、その日はそれで十分です。次の日も、同じ大きさの紙から始めてみてください。

手が1回動けば、止まっていた時間は、少しずつ動き出します。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 孤独感:内閣官房「人々のつながりに関する基礎調査(令和4年)」