すべての記事

作家の悩み百選 No.010

生成AIに、仕事を取られるか

「生成AIに仕事を取られるのではと不安」。不安の中身を分け、数字で確かめられることと、今日からできることを考えます。

明るいアトリエで、キャンバスに絵の具をのせる作家の手元

こんな不安はありませんか

「生成AIに仕事を取られるのではと不安」

言葉を入れるだけで、数秒で絵ができあがる。画面に並ぶ画像を見て、何日もかけて描く自分の手が、急に小さく見えてしまう。

画像の出来ばえに、思わず見入ってしまう自分もいる。その分だけ、胸の中の不安はふくらんでいく。

SNSでも、似た絵柄の画像が次々に流れてくる。自分が描いてきた道が、急に揺らいで見える日もある。

依頼の仕事をしている作家ほど、この不安は大きいかもしれません。「それならAIでいい」と言われる日が来るのではと、考えてしまうからです。

ここで、ひとつ考えてみてください。取られるのは、あなたの仕事のどの部分でしょうか。

画像をつくる仕事と、手でつくった1点ものを届ける仕事。この2つは、似ているようで別のものです。

不安は、分けると
小さくなる。

あなたの不安は、どちらの仕事についての不安ですか。

不安のまま立ち止まると、どうなるか

調べたことを、先にお伝えします。生成AIで作家の仕事がどれだけ減ったかを調べた、全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

数字の無い不安は、実際よりも大きく見えるものです。何が起きているか分からないまま、最悪の場面だけを想像してしまうからです。

依頼の打ち合わせで、参考として画像を見せられることも増えたかもしれません。そのたびに、自分の役目は何なのかと考えてしまう。

周りの声も、不安をあおります。「もう手で描く時代ではない」といった言葉を目にするたびに、筆を持つ手が重くなる。

不安が大きくなると、新しい作品に手が伸びなくなります。「どうせ」と思いながら描く作品は、作家自身の心も弱らせていきます。

同じ不安を持つ作家どうしで話すと、少しは楽になります。けれど、不安を言い合うだけでは、次の一歩は見えてきません。

立ち止まっている間にも、時間は過ぎていきます。発表の準備を先延ばしにすれば、作品が人の目に触れる機会も減っていきます。

不安そのものより、不安で手が止まることのほうが、作家にとって大きな損失になりかねません。

数字の無い不安に、
筆を止めさせない。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい白い壁のギャラリーで、絵の具の厚みが分かる原画に顔を近づけて見る人の後ろ姿
筆の跡まで見える、原画の前で(イメージ)

わたしは、50歳を過ぎて初めてアートを買いました。心を動かしたのは、実物の作品でした。

作品の前に立ったとき、原画の力を思い知らされました。それまでアートにそれほど興味のなかったわたしが、一目惚れで買うと決めたのです。

あのとき心を決めたのは、画面の画像ではありませんでした。作家が手でつくった、目の前の原画そのものだったのです。

売れていない作家の中にも、本当に素敵な作品を描く人はたくさんいます。原画の力は、まだ新しい市場に届いていないだけだと、わたしは感じています。

そう考えると、画像がどれだけ増えても、本物と向き合う時間は、別の価値として残るのかもしれません。

画面の中に画像があふれるほど、実物に出会ったときの驚きは大きくなる。そんな見方もできるのではないでしょうか。

作家の方からも、この不安はよく聞きます。だからこそ、買う人が何に心を動かされているのかを、数字で確かめてみたいのです。

欲しかったのは、
画像ではなく原画。

数字で答え合わせ:つくった人を、大切にする人がいる

この感覚を、数字で確かめます。文化庁の調査で、ふだん著作権を気にかけているかを聞いています。

著作権を意識していると答えた人は、39.8%でした。「好きなクリエーターを応援するために、著作権を大切にしている」という人も、12.9%います。

つくった人を大切にしたい、という気持ちを持つ人は、確かにいます。作品の向こうにいる作家を見ている人たちです。

「本物と向き合う時間は残る」という感覚は、一部当たりです。つくった人を応援したい人がいることは、数字から読み取れます。ただ、生成AIが作家の仕事にどう影響するかは、この数字では分かりません。

たとえば、作品の横に、下描きや途中の写真が添えてあったら。見る人は、作品ができるまでの時間ごと受け取れます。

買う人は、作品と一緒に、作家の時間や思いも受け取っています。その部分は、画像を何枚並べても代わりにはなりません。

依頼の仕事の中には、形が変わっていくものもあるかもしれません。それでも、実物の作品を届ける道は、作家にしかつくれません。その道を広げておくことが、不安へのいちばん確かな備えになります。

手でつくった1点を、
届ける道を太く。

7ARTSで、一緒にできること

明るい木の机の上に、下描きのスケッチと描き上げた色鮮やかな作品が並べて置かれている
下描きから完成まで、手でつくった記録(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。生成AIの影響を見通す力も、それを防ぐ仕組みも、7ARTSにはないからです。

生成AIとの付き合い方は、作家ごとに答えが違います。だからこそ、自分の手でつくった作品をどう残し、どう伝えるかを考えておきたいのです。

7ARTSには作品証明書があり、作品の確かな記録を残せます。ただ、それで不安がすべて消えるわけではありません。

作家が今日からできることもあります。制作の途中の様子を、写真で残しておくことです。下描き、途中、完成。その記録は、あなたが手でつくった証になります。

記録を残しておけば、作品について聞かれたときも、自分の言葉で説明しやすくなります。

作品が無断で学習に使われる心配や、似た画像が出回ったときの対応。著作権に関わることは、弁護士などの専門家に相談してください。ここで言い切れることはありません。

実物の価値は、
記録が支えてくれる。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。次につくる作品を1点決める、下描き・途中・完成を写真に撮る、3枚を作品と一緒に残す
今日、作家がやること

次につくる作品を、1点だけ決めてください。

その作品の下描き、途中、完成の3つの場面を、写真に撮ります。手元や道具が写っていてもかまいません。

撮った3枚は、作品と一緒に残しておいてください。つくる過程を残すことが、手でつくった作品の何よりの説明になります。

最初は、スマートフォンで撮るだけで十分です。撮る場所と明るさをそろえておくと、あとで並べたときに見比べやすくなります。

撮った写真は、作品を紹介するときにも使えます。途中の1枚を見た人は、完成した作品をより深く味わえるようになります。

不安は、すぐには消えないかもしれません。それでも、今日撮った1枚から、あなたの作品の物語は確かに積み上がっていきます。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 鑑賞の状況:文化庁「文化に関する世論調査」報告書(2024年3月・全国18歳以上24,996人)