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連載 アート市場を、数字で考える Vol.2

アートは、どこで買われてきたのか

連載「これからのアート市場を、数字で考える」第2回。作品はどこで買われてきたのか。画廊と百貨店が中心の売り方を、数字で確かめます。

百貨店の美術画廊のような、額装の原画が並ぶ明るい展示室

作品は、どこで売るものだと思いますか

個展を開くなら、画廊。大きな展示なら、百貨店の美術画廊。

多くの作家の方が、そう考えてきたのではないでしょうか。

画廊に声をかけ、展示の機会をもらう。百貨店の催事に呼ばれる日を待つ。わたしの目には、それが作品を売るための当たり前の道に見えていました。

先にお伝えしておくと、わたしはアート業界の人間ではありません。ここに書くのは、外からアート業界を見てきた、わたしの感覚です。だからこそ、その感覚が正しいのかを、数字で確かめていきます。

けれど、その道を通れる作家は、限られています。声がかからないまま、作品だけがアトリエに増えていく。そんな悩みを、よく耳にします。

「売る場所」を、あらためて考えたことはありますか。

あなたの作品は、いま、どこで買われていますか。

「売る場所」を、
考え直すときが来ている。

日本人の8割以上は、作品を買ったことがない

美術品を買ったことがある人は、日本全体で約16%です。

この数字は、一般社団法人アート東京と一般社団法人芸術と創造が約2万人を対象に行った「日本のアート産業に関する市場調査2018」(2019年3月発表)にあります。

100人のうち、作品を買ったことがある人は16人、まだ一度もない人は84人

100人いれば、84人は一度も作品を買ったことがありません。見方を変えれば、まだ誰も作品を届けていない人が、それだけいるということです。

一方で、同じ調査には、もう1つ気になる数字があります。海外での仕事の経験が豊かなビジネスパーソンに限ると、約半数が作品を買った経験を持っていました。

さらに、その人たちのうち、まだ買ったことがない人でも、約3割が購入に関心を持っていました。

出会う機会のある人ほど、作品を買っている。そして、まだ買っていない人の中にも、関心を持つ人がいる。この2つの数字は、そう読めます。

市場の大きさも見ておきます。同じ調査では、日本の美術品市場は2018年に2,460億円。2016年の2,431億円、2017年の2,437億円から、少しずつ増えてはいるものの、大きくは広がっていません。

市場があまり広がらないまま、限られた人たちに向けて、多くの作家が作品を届けようとしている。これが今の姿です。

市場は広がらず、
届け先だけが限られていく。

もちろん、84人の全員が作品をほしいと思っているわけではありません。それでも、まだ誰も作品を届けていない人が、これだけいるのです。

今までと同じ場所で売るだけでは、この8割の人には届きません。

わたしも、50歳を過ぎるまで「買ったことのない側」だった

明るい商店街で、店先に飾られた原画に目を留める人の後ろ姿
ふとしたきっかけで、作品に目が留まる(イメージ)

わたしも50歳を過ぎるまで、作品を一度も買ったことがありませんでした。

作家の友人もおらず、アートの世界にも縁がない。作品に触れる機会が、そもそもなかったのです。

まわりを見渡しても、アートに触れたことのない人は、本当にたくさんいました。

けれど、アートを買うお金がなかったわけではありません。一般の人も同じです。とても高い作品は無理でも、欲しいと思った作品なら買える人は、たくさんいます。

アートが嫌いなのではない。
まだ、出会っていないだけ。

買われる場所は、画廊と百貨店が中心

では、作品はどこで買われてきたのか。数字で答え合わせをします。

国内で作品が買われた場所のグラフ。画廊・ギャラリー735億円、百貨店644億円、アートフェア253億円、インターネット180億円、オークション135億円

画廊・ギャラリーが735億円、百貨店が644億円。合わせて1,379億円です。

国内の事業者から買われた2,125億円の、およそ65%を占めています。

アートフェアは253億円で約12%、インターネットは180億円で約8%です。画廊と百貨店に比べると、まだ小さな入り口です。

画廊や百貨店に扱ってもらえない作家には、作品を見てもらえる場所が少ない。数字からは、そう読み取れます。

「アートは、限られた場所で買われてきた」。外から見ていたわたしの感覚の答えは「当たり」でした。

一方で、同じ調査は、アートフェアとインターネットサイトの市場が、過去3年間で増加傾向にあると伝えています。

アートフェアやインターネットは、画廊や百貨店に足を運ばない人とも、作品が出会える場所です。

画廊と百貨店の外にも、
出会いの場は育っている。

7ARTSは、新しい売り方を一つ増やす

明るい美容室の白い壁に、色あざやかな原画が飾られている
美容室の壁も、作品に出会える場所になる(イメージ)

画廊や百貨店が続けてきた売り方は、これからも大切です。7ARTSは、それを壊すのではありません。新しい売り方を、もう一つ増やすのです。

売り方は、ひとりでに変わっていくものではないと、わたしは考えています。時代に合った新しい売り方を自分たちでつくり、その時代に順応していかなければ、生き残っていけません。

そして、新しい売り方の先にある市場のほうが、圧倒的に大きく、チャンスがあるはずです。作品を一度も買ったことのない、8割以上の人たち。その市場は、まだ手つかずで転がっているようなものです。

8割以上の市場が、
手つかずで転がっている。

福岡のギャラリーでは、通りを歩く人の目に作品が入る店先で、作家の作品を紹介しています。

7arts.jpでは、作家ごとのページで作品を紹介し、買いたい人や声をかけたい人の窓口にしています。

お店の壁に作品を飾るコラボ展示では、カフェや美容室など、ふだんアートと縁の少ない場所に作品を届ける取り組みを進めています。

フランスのモン・サン=ミッシェルで開いた展覧会では、世界中から訪れる人に、日本の作家の作品を見てもらいました。

作家にとっても、作品を飾るお店にとっても、作品に出会う人にとっても、うれしい形であること。7ARTSが大事にしているのは、誰も嫌な思いをしない広げ方です。

外に新しい出会いの場をつくれば、作家どうしも、ギャラリーとも、取り合いにはなりません。

出会う場所が増えれば、8割の側にいる人にも、作品は届き始めます。そこに目を向けるべきではないでしょうか。

今日、売れた作品の行き先を書き出してみる

売れた作品の行き先を書き出す流れの表。3つを書き出す、偏りを見つける、次に置く場所を決める
売れた作品の行き先を、書き出す

これまでに売れた作品が、どこで、どんな人に買われたか。1枚の紙に書き出してみてください。

書き出すのは、3つだけで十分です。売れた場所。買った人の年代。そして、買うきっかけになった出来事です。

もし画廊や百貨店だけに偏っていたら、あなたの作品は、まだ8割の人に出会っていないということです。

偏りが見えたら、それが新しい販路を探すための、最初の地図になります。

たとえば、買った人の多くが近所の人なら、地元のお店に飾る道があります。買うきっかけが「たまたま見かけた」なら、人が通る場所に作品を置く価値があります。

地図ができれば、次に作品を置く場所は、自然と見えてきます。

次回は「アート業界は、いま盛り上がっているのか」です。

7ARTSが作家のみなさんと取り組んでいることは、作家の方へのページでご覧いただけます。

出典

  • 作品を買ったことがある人の割合(約16%)・海外での仕事の経験が豊かなビジネスパーソンの購入経験(約半数)と関心(未購入者の約3割)・美術品市場(2016年2,431億円・2017年2,437億円・2018年2,460億円)・販売の場所ごとの購入額・アートフェアとインターネットサイトの増加傾向:「日本のアート産業に関する市場調査2018」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(2019年3月4日発表・約2万人を対象)